人間ドックでオプションの胸部CTを受けた方が良いか?

人間ドックのオプション検査で肺のCTというのがあります。
確かにCTを受ければ肺癌の発見が早くなるとは思います。
しかし、有用かと言われると・・・

肺癌を見つけるのに、CTはレントゲンより感度が高い

あなたも健康診断で胸部レントゲンを撮ったことはありますよね?
あれは、何を見ているのでしょうか?
肺癌健診が目的なので、言うまでもなく肺癌があるかないかを確認しています。

レントゲンでは、例えば横隔膜の裏や心臓の裏は隠れてしまうので、仮に癌があっても発見は困難です。また、1cmに満たないような小さい癌も発見するのは難しいでしょう。

胸部CTを行えば確かに肺癌の早期発見は可能になると思います。
しかし・・・

健診として胸部CTを受けることの問題点

胸部CTを健診で受けることには2つの問題点があると思います。

胸部CTによる放射線被曝の影響

一点目は胸部CTで見つかったその癌は、そもそも胸部CTを受けていなければ発生しなかった癌かもしれない、ということです。

胸部CTは放射線を使った検査なので、検査を受ければ被曝します。
あなたも放射線被曝と癌の因果関係については聞いたことがあると思います。

ただ、癌の発生と医療被曝の因果関係を証明することは難しいでしょう。
「CTを健診で使用したために肺癌が増加した」というエビデンスは見たことがありません。

しかし、日本ではあまりにも安易にCTを撮りすぎるために、日本人の癌の3-5%程度は医療被曝によるものじゃないか、という論文は見たことがあります。
そういう心配をしている医療関係者は少なからずいるということです。
因果関係が証明できないとはいえ、安易にCTを受けるべきではないでしょう。

 肺癌の早期発見は予後を改善するか?

二点目は、例えば5mm程度の癌らしきものが見つかったとしてその後どうするかという実務的な問題です。

通常5mmの段階で、これは明らかな癌である、手術しようと確定することは困難だと思います。
ある程度の大きさにならないと診断をつけるのは難しいことが多いです。

あまりに早期に発見しても、3ヶ月後や6ヶ月後に再検査で経過観察となることが多いです。
ある程度の大きさになって診断がつくまで検査が繰り返されます。
なので、CTじゃないと見つからない程度の大きさの癌の早期発見のために、放射線被曝をしてまで健診でCTを行う必要性が正当化できるのか、疑問です。

ちなみに写真は肺気腫。
肺がこんなに穴だらけになってしまうのですから、苦しそうですね。

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