大切なあなたの身体の管理を医者にまかせるとどうなるか?<前編>

数日前のことですが、私の外来に腹部大動脈瘤を放置されている患者さんが来ました。
病院への定期的な通院はしており薬も欠かさず飲んでいたのですが、なぜ大動脈瘤が放置されてしまったのでしょうか?

大動脈瘤は大きくなってくると破裂するリスクがどんどん高くなり、もし破裂したら致死率のとても高い病気です。
通常は定期的に診察して、大きくなってくれば手術という流れになります。
今回の患者さんは定期的に通院はしていたものの、大動脈瘤の診察は誰もしていませんでした。
なぜこのようなことになってしまったのでしょうか?
あなたも一緒に考えてみてください。

この患者さん、井上さんとしておきましょう。
井上さんは6年前に胆嚢炎で手術を受けてから、外科の藤崎先生(仮名)の外来に通院するようになっていました。
大動脈瘤は胆嚢炎の手術の時に腹部CTで偶然発見されたものでした。
しかし、6年前の動脈瘤はすぐに処置が必要というようなサイズではなかったため胆嚢炎の手術後より、藤崎先生が定期的にCTを撮ってサイズが大きくなっていないか確認していました。
井上さんは高血圧もありましたが血圧の薬だけなら、ということで血圧の薬も藤崎先生が処方してくれることになり、外科外来に通院しました。

ところが、藤崎先生が3年前に病院を異動することになってしまいました。
藤崎先生がいなくなった後も井上さんは外科外来に通院しましたが、血圧の薬をもらうだけなので特に先生は決めていませんでした。
いつもの薬をください、と言って薬をもらうだけの診療なので、手術をしてもらった藤崎先生以外ならどの先生の診察でも井上さんにとっては一緒でした。

あるとき、初めてお会いする外科の先生に言われました
「井上さんは血圧の薬をもらってるだけだから、今度から内科に通院してはどうでしょうか?」
井上さんも、それもそうだなと思い、次回からは内科に行きますと言って外科外来への通院を止めました。

こうして井上さんは私の内科外来を受診することになったのです。
私はどうして今まで高血圧で外科に通院していたのか井上さんに聞いてみました。
「胆嚢炎で藤崎先生にお世話になってからの付き合いで、高血圧だけど外科で見てもらってたんですよ」
他に何か外科で見てもらっていた病気はないんですか?
「胆嚢炎は治ったけど、あとお腹にポリープ?があるって言われたなぁ」
お腹のポリープ??大腸ポリープかな?

そこで私が外科カルテを3年分ほど遡って確認してみると、腹部大動脈瘤があるじゃないですか!
井上さんは、腹部大動脈瘤がありますね?もう3年も検査をしていませんが、どこか他の病院で診てもらっているのですか?
「大動脈瘤?何だかよく分からないけど、病気のことは藤崎先生に全部お任せしてたから」
・・・

大動脈瘤は3年前のCTですでに4cm以上はありそうです。
6cm以上に成長すれば年間10%の動脈瘤が破裂されると言われ、手術の適応となります。
現在の井上さんの動脈瘤は何cmまで成長しているのでしょうか。
井上さんの動脈瘤が破裂しなかったのは運が良かっただけですね。

これは名前以外は全て実話です。
そして、これくらいのことは頻繁に見かけます。
あなたが井上さんのようにならないためにはどうしたら良いでしょうか?
井上さんの行動の問題点も考えてみてください。
長くなったので、後編に続きます

Pocket

6件のフィードバック

  1. 私なら主治医が転勤の際に誰が次の主治医になるかお訊ねして引き継ぎをちゃんとして貰ってるか、両先生に確認します。模範解答?w

    • 模範解答ありがとうございます。
      引き継ぎをちゃんとしてくれていれば良いのですが。
      しかし、一人の先生がもっている患者数って一コマ20人×週3回×8週間分=480人くらいはいますね。
      自分で最初から診ていた患者さんは結構覚えているものですが。
      これだけ患者がいますので引き継ぎは、大抵「カルテにしっかり書いておきましたからって」言うだけで、引き継がれた先生は知らない患者が最初からたくさん居すぎてフォローしきれないということになります。

  2. どうもお疲れ様です。
    まったく怖いお話しですね。
    最近は電子カルテですから、要経過観察の項目は、先生が代わっても直ぐ判るよう、スマホでいう「ピン留」してカルテの最上位に来る設定が必要かと

    ‥ただ、最大の驚きは、ドクちゃんがまだ対面の外来やってるってことです ^^;
    スカイプ外来はまだ無理ですか‥

    • 電子カルテメーカーに言ってやってくださいよ(笑)
      そういう機能あったら良いのですが。
      使いにくいシステムばかりですよ。
      とくに富士○とか、おわってます。
      いや、ホントはあるのかもしれませんが、キーボード打つのも怪しい先生がいるなかで、システムを使いこなせないと思われてるかもしれません。

      スカイプ診療は保険では診療報酬がもらえないので、今のところ自由診療かボランティアかどちらかのみです。
      これだけで生きていくのはちょっと厳しいですね。

  3. うちでも危なかった方がいました

    主訴は咳嗽
    肺癌の既往歴あり、高血圧、高脂血症
    70代女性

    1ヶ月ほど鍼灸して数年患っていた咳が治まった後のある日

    腹診したら臍あたりに異常なシコリと拍動があったので、十数年前から高血圧と高脂血症で掛かっている内科医に診てもらう様に伝えましたところ。。。腹大動脈瘤70mm超で、後日、手術になりました。

    動脈硬化はあっても気付かれないものですねぇ。

    • 70mmは結構なサイズですね!
      痩せた高齢女性だと動脈瘤触れることありますね。
      でも、日常の外来診療で腹部触診なんて滅多にしないので、なかなか難しいです。
      胸部ならレントゲンはそれなりに撮るので見つかると思いますが。